松坂世代
矢崎 良一 / 河出書房新社
ISBN : 4309408192
満足度: ★★★★★
あなたの価値はいくらですか。
私は・・・考えたこともないですが、
あんた60億出しても買う!と言われる26歳って。。。
暇つぶしに買った本が当たりだと嬉しいものです。本書がそうでした。
奈良取材で出会った野球部顧問の先生と意気投合しちゃったタマゴンが、
勢いそのままに本書をあげてきちゃったらしいので遠い記憶を頼りに書きますが・・・。
平成の怪物・松坂そのものより、松坂を光り輝く太陽に見立て、その周りで、
光を浴び己も輝いた、あるいは光が眩しすぎ去っていった、周囲の人間たち──
「松坂世代」の選手たちの姿を描くノンフィクション。
元球児タマゴンに言わせると、甲子園に出て準決勝やら決勝を争う彼らは
もうそれだけでそうとう輝いてるんだからいいじゃん、ということだが、
それだけ才能もプライドもある彼らが、「50年、または100年に一人の逸材」を前にして
驚愕し、嫉妬し、共感し、応援し、尊敬する。
たまたま同じ時代に生れてしまったが故の不運、または運。
喜怒哀楽という単純な言葉では表現できない、複雑な感情を著者は丹念に追う。
直接松坂と対戦したことのない、同世代の選手たちについても、
いかに甲子園を目指し、戦い、そしてその後の人生をどう歩んでいるかを綴る。
マネージャーとして才能を開花させる者もいるし、大学や社会人野球で
プロの道を狙い続ける者、周囲の引き止めにも関わらず別の道を選んだ者もいる。
皆それぞれ、あの98年甲子園の経験を心に留めながら。
己に対して真摯に向き合い続けることの美しさを、彼らは教えてくれる。
松坂や野球に興味なくても、全力で何か(この場合は野球)にぶつかり、何かを感じ、
かみ締めながら生きている若者たちの姿は、胸を打つ。ぜひ読むべしですよ。
「1億円やるから1年生からやり直せと言われても絶対に断る」と卒業生が語るほど
きついPL学園の練習とか、驚きエピソードも満載。
個人的には、あの準決勝延長17回を投げ合い敗れたPL学園ピッチャー・上重聡君
(現日本テレビアナウンサー)のエピソードと、横浜高校時代にバッテリーを組んでいた
小山良男君のエピソードが心に残っています。
特に小山君。
光輝く存在の影で地道に努力し、静かに輝く人、の話に弱いのです。