物は言いよう
斎藤 美奈子 / 平凡社
ISBN : 4582832415
スコア選択: ★★★★
文芸評論家・斎藤美奈子さんの著作で今まで読んだのは「あほらし屋の鐘が鳴る」「読者は踊る」「趣味は読書。」「文学的商品学」「L文学完全読本」「。辛口批評で、有名作家でも遠慮なく切って、かつインテリジェンスな語り口、ユーモアも交えまくり。なので、好きなのです、この人の書くもの。
覚えてるのは、「文学的商品学」の中だったかな、うろ覚えだけど、「渡辺淳一の小説の服装の記述は必ず色+形状+アイテム名、色+形状+アイテム名の繰り返し」(例「紺のフレアーのスカートを身に付け・・・」)とかいうの。“慧眼”という言葉がぴったり。
本作も「フェミ・コード(=言動がセクハラや性差別にならないかどうかを検討するための基準)」というキーワードで、「女の涙には勝てん」「男はスケベだ」「女だからこそ・・・」等々、政治家や著名人により発せられた、フェミ・コード的にNGな言葉を羅列し検証していく。フェミニストが異議申し立てをすると、新聞は「かみついた」と表現するが、それはなぜか、とか。ジェンダー・フリー教育や雅子様御懐妊報道など、タイムリーな話題も満載。
読み進んで後半までいくと「何もここまで重箱の隅をつつかなくても・・・」と思ったりもするのだが、この方は「何もここまで重箱の隅をつつかなくても、とお思いだろう。だけど、・・・」等々、必ずといっていいほど読者の意識に先回りして、解説してくれるのだ。やっぱりインテリだ。
「フェミニスト」に対する世間の偏見とか、実際偏見の原因でもある一部のフェミニストの振る舞いとかに関しても触れられているのだが、なんだかんだいって、少し前の世代よりも、自分がお茶くみとか制服なしで働いたり、男と「家事分担」とかって言って共同生活できてるのも、先人の女性運動の方々の汗の上に築かれているっていうのはあるんだから。フェミ・コード的にNGな言葉にはせめて敏感でありたいと思う。
それにしても、さすがに最近は「愚妻」「愚息」なんて言う人はいないよね。結婚相手をどう呼ぶかでその人の人となりがあらわになってしまうそうだが、私結婚したらなんて呼べばいいんだ?「主人」「連れ合い」「ダーリン」「夫」「ダンナ」「パートナー」・・・「主人」は絶対やでしょ。や やっぱ「夫」か「ダンナ」が無難かな?