鶴見川日記


●「凍」沢木耕太郎著、新潮社●


沢木 耕太郎 / 新潮社
ISBN : 410327512X
スコア選択: ※※※※※


とにかくすごい。沢木耕太郎が、というより、描かれる山野井夫妻そのものが。標高何千メートルで、ロープに座って寝るとか、指や視力を失っての下山とか、その極限状態のなかでの冷静ぶり。

うちでは今、「ビバーク」が流行中(喫茶店を通りかかって「ちょっとビバークしてく?」とか)。山野井夫妻の崇高な佇まい、夫婦愛を前にして、「(タマゴンしか飲まない)ヤクルトと(私しか食わない)ヨーグルトは割り勘代に入れるか」とか、「寝る前の電気をどっちが消すか」とか、そういう醜い言い争いはちょっとやめよう、という、うちでのちょっとした抑止力になっております。(く くだらん。)

本作の魅力は、沢木耕太郎の語り口によるところも大だろう。夫婦だけで命綱をつなぎ、標高何千メートルで遭難、ということになると、どうしても「夫は妻を見捨てて下山できるのか?」みたいな、夫婦愛の物語を想像してしまうけど、そういう描写はしない。淡々と、本当にこつこつと寡黙に山を登る人のように、最低限の状況説明、心理描写しかしない。その分、本当にちょっとだけ夫婦愛に関するエピソードがでてくると、逆に印象に残る。「やはり、この二人は愛し合っていて・・・」等々、こちらのそんな下世話な想像力を二人は超えてしまってはいるのだけれど。

沢木耕太郎、山野井夫妻、両者のストイックな職人ぶりが合致した、素晴らしい作品。良い読書時間をありがとう。

山野井泰史さんの「山野井通信」がまた朴訥な感じですてきです。
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by chocciu | 2006-01-25 00:18 | 読書

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33歳女、編集業者による日記です.
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プロフィール
34歳、女、旦那と2人暮らし、神奈川県在住、仕事は編集、夢は印税生活。

スキ:散歩、漫画だらだら読み、カウリスマキ、是枝裕和、高村薫、西原理恵子、国内ぶらり旅、鶴見川チャリ。

キライ:ほうれん草のごまあえ

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