みなさん、さようなら
久保寺 健彦 / / 幻冬舎
ISBN : 4344014154
満足度: ★★★
第1回パピルス新人賞受賞作。
私は幼少時、当時日本有数の規模といわれた木曽山崎団地の近くで
暮らしていて、クラスの子はみんな団地っ子(私自身はその中に混ぜて
もらってるって感じで、一軒家組だったが)だったので、団地ライフは
かなり身近であった。
当時、団地内の広場は、遊ぶのにも場所取りで大変だった。
が、大人になってから懐かしくなって訪ねてみたら、休日にもかかわらず
外に出て遊んでいる子どもがほとんどいなくて、ああ子どもが減ったのかと
感傷に浸った覚えがある。
そんなわけで、この本で描かれる団地ライフ──コミセンとか、ケーキ屋・
タイジロンヌとか、動物のオブジェの公園とか、団地の雰囲気ってあーそうそう、
そーなんだよと、個人的につぼを押されました。
「団地から一歩も出ない男」の設定だけでなんかもうツカミはOKというか、
面白いのだけれど、その謎が明かされ、かつ小学校の同級生たちが
どんどん団地を去っていく様子など、読み進むにつれ切なさを誘う。
あと、こないだの芥川賞選評で、池澤夏樹さんだったっけか、
最近の小説は男と女が寝そうで寝ない、そんな話ばっかり、みたいな
ことを嘆きがちに仰せられていたが、この小説は逆で、主人公の男は
かなり「オトコ」、マッチョだし、かなりアタマん中は「女とやりたーい」みたいな、
古典的なスケベなんだけどかえってそれが健全な印象。